鍵盤楽器略史

鍵盤楽器の仲間でもっとも歴史が古いのはオルガンで、紀元前3世紀にエジプトのアレクサンドリアでギリシア人技術者クテシビオスが発明しました。やわらかい音色と、鍵盤の弾きやすさから、古代ローマ時代にはたいへん人気のある楽器になりました。ローマ帝国の滅亡とともにヨーロッパでは一旦すたれましたが、中世文化の復興とともに復活し、大聖堂が建てられた12〜13世紀頃には教会音楽用の巨大な楽器へと変貌をとげます。ルネサンス期を経て、17,8世紀のバロック時代には楽器として完成の域に達し、オルガン音楽の黄金期となりました。一方、チェンバロ、ピアノは、14世紀にはじめて記録に現れた比較的新しい楽器です。これらはともに木の箱に弦をはったツィンバロンという楽器に、オルガンの鍵盤をとりつけたもので、チェンバロは弦をはじき、ピアノは弦を叩いて音を出す仕組みです。ピアノは発音機構が複雑になるためか、最初に栄えたのはチェンバロの仲間でした。オルガンと同じく、チェンバロも17,8世紀のバロック時代に完成の域に達し、黄金期を迎えています。一方、ピアノは長い間日の目を見ませんでしたが、18世紀初期のクリストフォリ、ジルバーマンらの改良を経て、18世紀の半ばから流行しだし、18世紀後期モーツァルト、ベートーヴェンの時代にはついにチェンバロにとってかわりました。当初ピアノの特徴は、チェンバロに不可能な弱音を表現することでしたが、フランス革命を経て大衆化していく時代の流れのなかで、コンサートホールでの演奏に向いた音量の豊かさが求められるようになります。現代のピアノの原型は19世紀の後半に確立されたものです。


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