文献紹介
古楽、鍵盤楽器の演奏技法、日本人と音楽、などこのホームページに関連するテーマに関する本を紹介していきたいと思います。客観的な、または網羅的な文献紹介は他に譲って、ここでは、基本的に手持ちの本からおすすめのものを紹介していきたいと思います。
★★は特に重要で、しかも比較的読みやすいもの
★は重要で読みやすいが、「外国語で書かれている」「大部である」「高価である」など少し難があるもの
チェンバロについて
〈演奏法について16〜18世紀に書かれた本〉
Libro llamado, Arte de tañer Fantasíia (Tomás de Santa
María著)★
スペインルネサンスチェンバロ音楽の基本文献。英訳あり。
Il Transilvano (Diruta著)
イタリア初期バロックの基本文献。英訳あり。
「クラヴサン奏法」 C.クープラン著 山田貢訳 シンフォニア ★★
フランス楽派の演奏法を述べた基本文献
「正しいクラヴィーア奏法」 C.P.E.バッハ著 東川清一 訳 全音 ★
大バッハの息子により書かれ、ハイドン、ベートーヴェンらも使ったドイツ楽派の基本文献
チェンバロ以外で、バロック音楽の演奏法を述べた16〜18世紀の原典では以下がおすすめ。
(17世紀の原典)
「ヴィオル概論」 ルソー著 関根、神戸訳 アカデミア・ミュージック
Principes de la Flûte Traversière, ou de la Flûte Alemande
(Hotteterre著)
Georg Muffat on Performance Practice (Wilson編 Indiana UP)
(18世紀の原典)
「クヴァンツ・フルート奏法試論」 クヴァンツ著 井本・石原訳 シンフォニア ★★
「アグリコラ バロックの声楽技法」 アグリコラ著 クライン・小椋訳 シンフォニア
「バロックのヴァイオリン奏法」 ジェミニアーニ著 内田訳 シンフォニア
〈演奏法についての現代の本〉
「チェンバロの演奏法」 エタ・ハリッヒ=シュナイダー著 山田貢著 シンフォニア ★
「バロックから初期古典派までの音楽の奏法」 橋本 英二著 音友 ★
Organ Technique An Historical Approach (Sonderlund著 Chapel Hill)
戦前の著作で情報は古いが、古楽演奏の出発点としておもしろいのが
「17・18世紀の演奏解釈」 ドルメッチ著 浅妻訳 音友
チェンバロ奏法というよりバロック奏法全般について比較的読みやすいのは
「古楽とは何か」 アーノンクール著 樋口・許訳 音友 ★
「トン・コープマンのバロック音楽講義」 コープマン著 風間訳 音友 ★
以上は、総論的なものだが、分野を絞ったものとしては以下がおすすめ。
(フランスバロックについて)
Dance Rhythms of the French Baroque (Mather著 Indiana UP)
The Harmonic Orator (Ranum著 Pendragon) ★
(ドイツバロックについて)
Musica Poetica (Bartel著 Nebraska)
Dance and the Music of Bach (Little,Jenne著 Indiana UP)
バッハの曲などで8分音符や16分音符が連続した箇所をどのように弾くのかよく質問される。シュヴァイツァーの「バッハ」も参考になるが、
Bach Interpretation (Butt著 CambridgeUP)
という本に原典に残されたアーティキュレーション記号が網羅されている。
〈通奏低音〉
教科書ではないが、必須とされる参考文献は以下の2冊
The Accompaniment from a Thorough-Bass (Arnold著 Dover)
Figured Bass Accompaniment (Williams著 Edinburgh)
教科書として標準的なものは
Die Grundlagen des Generalbasspiels (Christensen著 Barenreiter) ★
英語版も出ている。日本語で読めるものとしては
H.ケラー 通奏低音奏法 ケラー著 野村訳 全音
が古いものだが教科書としては使える(独習は難しいかも)。絶版になったが
ヘンデルの数字付低音課題に基づく通奏低音奏法 レッドベター著 多田訳 全音 ★
は取り扱っている範囲が限られているが、たいへんわかりやすい(英語版はまだあるかも)
テーマをしぼったものとしては
The Performance of Italian Basso Continuo (Nuti著 Ashgate)
Continuo Realization in Handel's Vocal Music (Rogers著 URP)
も良書。狭い意味での通奏低音の本ではないが、
Music in the Galant Style (Gjerdingen著 OUP)
は18世紀中頃の作曲法を知るうえでたいへん役に立つ本。通奏低音にもヒントがあると思う。
なお、C.P.E.バッハの「正しいクラヴィーア奏法」第2巻とクヴァンツの「フルート奏法試論」も通奏低音の勉強に欠かせない。
〈楽器について〉
楽器のメンテナンスのための実用的なマニュアルは
「チェンバロの保守と調律」(補遺編と合わせて2巻本) 野村満男著 東京コレギウム
「図解チェンバロメンテナンス」 久保田彰著 東京コレギウム
読み物としては
「チェンバロフォルテピアノ」 渡辺順生著 東京書籍
「DVDブック チェンバロ・歴史と様式の系譜」 久保田彰著 ショパン
ルネサンス、バロックのダンスについて
〈映像資料〉
La danse Baroque (DVD)(Beatrice Massin監修)★★
バロックダンスの代表的な曲種の解説と実演。amazon.frで入手できる。(但し、映像方式がPALなので一般のDVD再生機では見られない)
Le Bourgeois Gentilhomme(DVD) (Le Poème Harmonique演奏 Alpha) ★
ダンスは幕間のみだが、優れたバロックダンスの映像記録。同じ演奏団体による
Cadmus et Hermione(DVD) (Le Poème Harmonique演奏 Alpha)
もある。こちらはオペラだが若干ダンスがある。ラモーのオペラにはダンスシーンが多いが、市販されているDVDはモダンダンスによる振り付けのみ。意欲は買えるものがあるが、音楽との密接なつながりが感じられない。
You Tubeで検索すると玉石混合だが、さまざまなルネサンスダンス、バロックダンスを見られる。
〈ルネサンスダンスの本〉
On the Practice or Art of Dancing (Barbara Sparti訳編 Oxford UP)
グリエルモ・エブレオGuglielmo EbreoのDe Pratica seu Arte Tripudiiの英訳+解説
Courtly Dance of the Renaissance (Julia Sutton訳編 Dover)
ファブリツィオ・カローゾFabritio CarosoのNobilità di Dameの英訳+解説
Orchesography (Mary Stewart Evans訳 Julia Sutton注 Dover) ★
トワノ・アルボーThoinot Arbeauのオルケソグラフィーの英訳
〈バロックダンスの本〉
Dance and Music of Court and Theatre (Hilton著 Pendragon) ★
Dance Rhythms of the French Baroque (Mather著 Indiana UP)
Dance and the Music of Bach (Little,Jenne著 Indiana UP) ★
音楽史について
〈概説〉
「音楽史の名曲」 美山良夫、茂木博 編著 春秋社 ★★
概説、年表、譜例からなる非常に便利な本
「バロック音楽」 皆川達夫著 講談社現代新書(講談社学術文庫から復刊)
「中世・ルネサンスの音楽」 皆川達夫著 講談社現代新書(講談社学術文庫から復刊)
上記2冊は日本での古楽紹介の古典
「バロックの社会と音楽 上下」 今谷和徳著 音楽之友社
も曲の背景を知るために便利な資料
〈鍵盤音楽史〉
The History of Keyboard Music to 1700 (Willi Apel著 Indiana UP)
〈資料集〉
Source Readings in Music History (Oliver Strunk編 全5巻 Norton)
〈記譜法〉
The Notation of Polyphonic Music 900-1600 (Willi Apel著 The Medieval Academy
of America)
演奏技術・身体技法について
〈アレクサンダー・テクニック〉
「音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと」 コナブル著 片桐・小野訳 誠信書房 ★
「アレクサンダー・テクニークによる変容の術」 パーク著 片桐・小山訳 新水社 ★
〈フェルデンクライス・メソッド〉
「心をひらく体のレッスン」 フェルデンクライス著 安井訳 一光社 ★
「フェルデンクライス身体訓練法」 フェルデンクライス著 安井訳 大和書房 ★
Body & Mature Behavior (Moshe Feldenkrais著 Somatic Resources Frog,
Ltd)
The Potent Self(Moshe Feldenkrais著 Somatic Resources Frog, Ltd)
Singing with Your Whole Self (Samuel Nelson, Elizabeth Blades-Zeller著 Scarecrow
Press)
〈野口整体〉
「整体入門」 野口晴哉著 ちくま文庫
「風邪の効用」 野口晴哉著 ちくま文庫
〈野口体操〉
「野口体操 からだに貞く」 野口三千三著 春秋社 ★
「野口体操 おもさに貞く」 野口三千三著 春秋社
〈簡単な解剖学〉
「からだの地図帳」 高橋長雄監修 講談社 ★
「やさしい美術解剖図」 シェパード著 マール社
もう少し詳しく知りたければ
「カラースケッチ 解剖学」 Kapit/Elson著 嶋井監訳 廣川書店 ★
が勉強しやすいと思う。
〈演劇〉
「あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント」 鴻上尚史著 講談社文庫
「発声と身体のレッスン」 鴻上尚史著 白水社
〈心理的テクニック〉
テニスの本だがそのまま音楽に応用できるのが
「新インナーゲーム」 ガルウェイ著 後藤訳 日刊スポーツ ★
これを音楽に適用した本もある(「新インナーゲーム」の方が良い)。
「演奏家のための「心のレッスン」」 グリーン著 辻監訳 丹野訳 音友
絵画の本だがヒントになるのが
「脳の右側で描け」 エドワーズ著 北村訳 エルテ出版 ★
日本人と西洋音楽
「日本人はクラシック音楽をどう把握するか」 傳田文夫著 芸術現代社
「音の文化誌ー東西比較文化考」 佐野清彦著 雄山閣出版
「森有正エッセー集成1〜5」 森有正著 ちくま学芸文庫
トップページに戻る。